クラウドCMSは小型案件に最適かも知れないという話
先日、MovableType.netのハンズオンに参加してきました。
そもそもこのWeb業界に入ってくるきっかけはWordPressでしたし、WordPressは変わらず大好きなツールです。
これまではWordPressでだいたい事足りでいたので、他のCMSに目が行くこともありませんでした。
ではなぜMovableTypeハンズオンに参加したかというと、ここのところWordPressしか扱えないということに限界を感じることが多くなってきているんですよね。
どうしても公開サーバーと編集サーバーを分離させたいという要求だったり、承認フローが必須だったりという要件に対してWordPressはちょっと厳しい戦いにならざるを得ないです。(解決策をご存知の方ぜひご教示ください。shifterは気になっています。)
そして上記のような要件が入ってくるような案件は金額も高めです。
こういった案件をスルーしないためにも、これらに適したCMSを手札として持っておきたいというのもあります。
というわけでハンズオンを受けてきたのですが、その結果として、クラウド型のCMSという選択は小型案件にはもってこいなのではないか?という結論に至りました。MovableType.netを例に考えをまとめていきたいと思います。
保守や問い合わせ対応をベンダーに任せて制作や施策に集中する時間を確保できる!
企業にとってウェブサイトは「あって当然」になっています。だからこそ我々Webサイト制作を生業とする企業も存在するわけですが、これにはいくつかの不幸が紛れ込んでいます。
ウェブサイトを持ったからには、大なり小なり「保守」や「管理」が必須になります。例としては、使用している技術が廃止される、新たな脆弱性が見つかって対応が必要になるケースなどです。
しかし、保守というのは(おそらく)どの世界でも経営者から疎まれるものです。
例えば生産機械の保守などであれば、修理を頼めたり、何らかのセミナーに参加する権利を得られたりなど、目に見える特典があるので納得してもらえることもあるでしょう。
しかしサイトの単純な保守は全く目に見えないものを提供するので、理解を得るのはとても難しいです。さらに、保守を請け負うというのは制作会社にとっては正直なところ非常にリスキーかつ不採算な活動になりがちです。
もちろん制作者としてその重要性は理解していても、ログの集計や基本操作の説明に時間を取られて制作物のレベルアップに時間を取ることができないのは制作者としての生き残りという観点から見れば危険であったりもします。
それが、セキュリティもサポートもベンダーに任せられるとしたら。
これは制作に打ち込みたい制作会社やフリーランスにとっても、費用を抑えつつサイトを安全に保っておきたい経営者にとってみても、大きなメリットではないでしょうか。
CMSに最適化されたサーバーで高速レスポンス
MovableType.netは動的配信のCMSですが、表示の速さは相当なものでした。さすがに静的配信のサイトとまでは言えないまでも、十分な速度です。Page Speed Insightsにかけてみました。
もちろんコンテンツが増えればこうは行かない可能性もありますが、十分な速度を出していると思います。高速なサーバーを利用しているのはもちろん、CMSに最適化されたチューニングも当然されているでしょうから、極端に遅くなることは考えにくいです。
またまた価格の話になりますが、これくらいレスポンスの良いサーバーをレンタルサーバーで実現しようとすると月々1000円は欲しいところです。
ちなみにTTFB(Time To First Byte)も知りたくなって測ってみました。
190.28ms。
次はとあるレンタルサーバーです。月に直すと2000円かかります。サイトはWordPressで動いているので純粋な比較ではないのですが、参考値として。
絶対値としては2000円のサーバーに軍配が上がりますが、MovableType.netにはその他のサービスも付属してるので、総合力としてはMovableType.netが勝ると言っていいでしょう。
サーバーがそれぞれのCMSに最適化されるのはおそらくどのクラウドCMベンダーも行うでしょうから、安全で高速なサーバーを利用できるクラウド型CMSは一考の価値ありと言えます。
安全のカラクリ
もちろんこの背景にはいくつかのカラクリがあって、機能のやストレージの制限があったりします。例えばWordPress.comでは、公式ディレクトリ以外のプラグインが利用できないという制限がかかります。
しかし、保守を依頼される側からすれば当然と言えば当然で、どこの誰が作ったかわからないプログラムを導入するのはあまりに危険なことです。
高速かつ安全なサーバーというのは、こう言ったルールの上でこそ成り立っています。
共有型のレンタルサーバーを利用していて、たまたま同じサーバー上に置かれていた他所のサイトがハッキングされて、自サイトのパフォーマンスがガクッと落ち込む、というようなことは、稀にとは言え実際にあります。
ルールが緩ければ緩いほどそう言った危険が増えます。
ハイクオリティなサイトが高速に作成できるかもしれない(充実した基本テンプレートとSixApart社の懐の広さで)
今回のハンズオンはSixApart主催のセミナーだったのですが、講師の方が他社の活用事例を色々と話されていました。
中でも印象的だったのは、「MovableType.netにあらかじめ用意されているテンプレートは、そのままでも、改変しても、それをクライアントのサイトに利用してもらって全然OKです。」「ある制作会社さんは、基本のテンプレートを分解して、組み合わせて新たなテンプレートが即時にできあがるような仕組みを作って営業している方もいます」という発言。
なんとも懐が広いですね。実際にテーマを色々と触ってみるとわかりますが、確かにこれらを組み合わせればそのまま売れるよな〜と思えます。
WordPressだと企業サイトでかつ日本語で、という条件に合うデザインがされたテーマはごく少数しか存在しないため、ゼロベースで作るというのが第一選択肢となることが多いですが、MovableTypeは日本の企業なので、当然日本語表示を前提としたデザインが施されています。
これらのベーステーマを利用すれば工数はかなり削減できるのではないでしょうか。
低予算の仕事に手離れよく対応するにはもってこい
さてここまでの話を総合すると、工数が少なくすみ、安全かつ高速なサーバーが利用できて、セキュリティも基本操作サポートも丸投げできる、こう言ったメリットが見えてきます。
反対に、色々と複雑な要件があるとか、ウェブサイトを最大限活用して行きたい、という要望には向きません。
ということは、低予算、かつその後のサポートも必要になりそうな「ITとかパソコンとかよくわからない。」「とりあえず見栄えのいいサイトがあればいい」「操作方法がわからないから都度電話で教えてくれ」「セキュリティは完全にしてくれ」というごく一般的な案件にぴったりマッチしそうです。
小さな組織では保守やサポートに人員を割けないという事情もあるでしょう。そもそも制作者は制作に集中して技術や施策の精度を高めることに集中したいという気持ちも強いです。
そんな時にも、クラウドCMSは強い味方になってくれそうです。